🎭 この記事は:保育士・幼稚園教諭・小学校の先生など教育現場で劇あそびを取り入れたい方向けに書いています。家庭での読み聞かせには姉妹記事「三びきのこぶた は生きた教材」をご覧ください。
📌 本記事は著者の55年以上の演劇・語り芝居の現場体験に基づく個人の見解です。実践の際は各現場の状況に合わせてご活用ください。
✅ この記事でわかること
- はじめに:「もう知ってる」と言われたあとから始まる三びきのこぶた
- 「選ぶ・失敗する・やり直す」を中心にした三びきのこぶたの再構成
- こぶたは「どうして壊れたのか」を振り返る
- 声かけの仕方
はじめに:「もう知ってる」から始まる三びきのこぶた
目的
既知の物語でも、子どもが主体的に参加できる導入をつくる。
手順
- 子どもに物語名を伝える前に問いかけを行う。例:
「もし自分の家を作るなら、どんな材料がいい?」 - 子どもの反応 「もう知ってる」「こわい」などを確認する。
- 扱うテーマを明確にする選択・失敗・やり直し
- 家が壊れる場面を「選択の結果」
として扱うことを伝える。
ねらい子どもの反応を導入に活かし、物語を「・選ぶ・失敗する・やり直す」の教材として位置づける。
「選ぶ・失敗する・やり直す」を中心にした三びきのこぶたの再構成
目的
三びきのこぶたを「家の強さ比べ」ではなく、選択→失敗→再挑戦の学びとして扱う。
手順
- 即興劇として展開する(台本を固定しない)。
- 子どもが材料を選ぶ場面を必ず入れる。
- 選んだ理由を短い言葉で言語化させる。
- 壊れた場面で「どうして壊れた?」と振り返りを行う。
- 「次はどうする?」と再挑戦の場面をつくる。
- ねらい 子どもが自分の選択を言語化し、失敗を次の行動につなげる。
材料選び|子どもの願いを引き出す
目的
子どもの価値観・願いを把握し、劇あそびの表現につなげる。
手順
- 原作の材料に限定せず、自由に選ばせる(氷・お菓子・風船など)。
- 「どうしてそれにしたの?」と理由を聞く。
- 子どもの言葉を短いセリフにする。例:「ふわふわだと安心するから」
- 材料を簡単に作れる形にする(新聞紙・段ボール・ティッシュ箱など)。
ねらい
子どもの“今”を反映した表現が生まれ、劇あそびが自己表現の場になる。
現場からのポイント
現場からのひとこと
年長組で「三びきのこぶた」を始める前の導入の時間です。
私が「どんな家に住みたい?」と問いかけると、すぐに答える子はほとんどいませんでした。
前列の男の子は机の角を指でこすりながら、「マンションがいい。だってエレベーターあるし」と言いました。
その隣の子は、私の顔をじっと見てから 「海の家!波が来てもいいやつ!」 と言い、周りの子がくすっと笑いました。
後ろの席の女の子は、少し考えるふりをしながら 「沖縄の家。あったかいから」と言いましたが、言ったあとに私の反応をうかがうように ちらっと視線を上げました。
さらに別の子が 「ディズニーみたいな家!」と言うと、数人が「それはないでしょ〜」と笑い、その子は肩をすくめてニヤッとしました。
このときの子どもたちの表情や声の調子には、 “本気”と“試し”が入り混じっている感じ がありました。
物語に入る前の導入は、子どもが保育者の反応を試す時間でもあります。
「どこまで言っていいのか」 「どこまで受け止めてもらえるのか」
子どもたちは、わざと現実離れした家を言ってみたり、 友だちの反応を見たりしながら、場の空気を探っている のです。
その“揺れ”の中に、安心したい、楽しい家がいい、あたたかい場所がいい── そんな生活実感が少しずつ見えてきました。
この導入の時間は、子どもが物語の世界へ入るための 小さな試練の時間 であり、保育者が子どもの言葉の奥をそっと受け止める大切な場面でした。
目的
劇あそびの教育的価値を明確にする。
手順
- 子どもが物語の中で「選択する場面」を体験できるようにする。
- 選んだ理由・結果・改善点を言語化する時間をつくる。
- 大人は答えを与えず、子どもが考える時間を確保する。
ねらい
選択の体験を通して、思考力・共感力・自己表現力が自然に育つ。
場面別の進め方(藁・木・レンガ)
藁の家(こぶた一)
目的
選択の結果を体験する。
手順
- オオカミ役が「どうなるかな?」と問いかける。
- うちわや風を送る道具で軽く風を送る。
- 壊れたら「どうして壊れたと思う?」と聞く。
ねらい
選択と結果のつながりを理解する。
木の家(こぶた二)
目的
努力と課題の両方を体験する。
手順
- オオカミ役が「さっきより頑張ったね」と認める。
- 少し強めの風を送る。
- 壊れたら「どこが弱かった?」と改善点を考える。
ねらい
努力を評価しつつ、改善点を考える。
レンガの家(こぶた三)
目的
選択の理由を言語化する。
手順
- オオカミ役が「どうしてこれにした?」と質問する。
- 壊れないことを確認する。
- 「どんな工夫をした?」と説明させる。
ねらい
選択の根拠を説明する力を育てる。
振り返り|失敗を学びに変える声かけ
現場からのひとこと
年長組で「三びきのこぶた」の劇あそびをしていた日のことです。
木の家を作った子が、オオカミ役の子が風を送った瞬間、家は勢いよく吹き飛ばされました。
木の家は、成長の三段階の二番目。「わらよりは頑張った。でも、まだ壊れる」という位置づけの家です。
だからこの場面は、 “壊れること”そのものが学びの入口 になります。
家を作った子は、飛んでいった段ボールを目で追ったあと、その場にしゃがみ込み、手をぎゅっと握ったり開いたりしながら、しばらく何も言いませんでした。
私がそばに行き、「どうして壊れたと思う?」 とゆっくり声をかけると、その子は下を向いたまま 「……わかんない」と小さく答えました。
すると、見ていた別の子が少し距離を保ちながら 「ここ、はずれやすかったよ」と段ボールの端を指で軽く押しました。
言われた子は顔を上げて 「ちがうし!」 と強めに言い返しましたが、そのあと自分でも段ボールの端を触ってみて、 指先の感触を確かめるようにじっと見つめていました。
私が「ここ、どうだった?」 ともう一度ゆっくり聞くと、その子は少し間を置いてから 「……たしかに、ゆるかったかも」と小さな声で言いました。
この瞬間が、木の家の子が“振り返る機会をもらった”場面です。
周りの子が自然に集まってきて、「じゃあ、次どうする?」 「テープ増やす?」 「一緒にやる?」 と段ボールを触りながら相談を始めました。
相談しながらも、その子はまだ悔しさが残っているようで、目をこすったり、段ボールを強く握ったりしていました。
でも、「ここを重ねたら強くなるよ」と友だちが言ったとき、その子は小さくうなずき、「……やってみる」 と明るい声で言いました。
木の家の場面は、 “壊れたからこそ、次を考えられる” という成長の段階にある子どもにとって、 とても大切な学びの時間でした。
目的
失敗を「次の行動」につなげる思考を育てる。
手順
- 壊れた場面のあとに振り返りの時間をつくる。
- 「なぜ壊れた?」と原因を考える。
- 「次はどうする?」と改善策を考える。
- 「誰に相談する?」と協働を促す。
ねらい
原因と改善点を自分の言葉で整理し、再挑戦への意欲を高める。
やり直しの対話例
目的
再挑戦の意欲を引き出す。
手順
- 子どもが言いやすい短いセリフを用意する。例:
「こんどは一緒に作ろう」
「強い材料を調べてみよう」 - 再挑戦の場面を必ず入れる。
ねらい
再挑戦のプロセスを自然に体験し、協働の感覚を育てる。
劇あそびの実務ノウハウ
現場からのひとこと
年長組で「三びきのこぶた」の劇あそびをした日のことです。
この日は、台本をほとんど用意せず、転換の言葉だけ を決めて、あとは子どもたちの自由なセリフで進める形にしました。
わらの家を作った子が舞台に立つと、観客の子どもたちがざわざわし始め、「ほんとに壊れるの?」「オオカミくる?」 と小声で話し合っていました。
私が観客席に向かって「どうなると思う?」と問いかけると、
前の席の子が手を挙げて「風でとぶと思う!」と言い、
その言葉に舞台の子が反応して「じゃあ、もっと強く作る!」 と新聞紙をぎゅっと丸め直しました。
小道具は子どもと一緒に作った新聞紙と段ボール。そのため、作りながら
「これ弱い?」「もっと重ねる?」 と自然に相談が生まれ、舞台に立つ前からすでに劇あそびが始まっていました。
オオカミ役の子は、「こわがらせる」より 「問いかけ役」として動くように伝えていたので、
わらの家の前で 「ほんとにこれでいいの?」 と聞くと、
作った子は少し考えてから 「……いい!」 と言い切りました。
そのあと風を送ると、家はすぐに飛ばされ、観客の子どもたちが「あー!」と声を上げました。
壊れた家を見て、作った子は悔しそうに新聞紙を拾い集めていました。
すると観客席から 「次どうする?」「もっと重ねたら?」と声が飛びました。
その子は少し照れながら 「……やってみる」 と答えました。
この場面で改めて感じたのは、劇あそびは“舞台に立つ子だけの活動ではない” ということ。
観客の子どもも問いかけによって参加し、舞台の子どもはその声を受けて考え、小道具を作る時間も含めて、すべてが「子どもを知る場」になっていきます。
自分で作った家だからこそ、壊れたときの悔しさも、直したい気持ちも強くなる。
劇あそびは、子どもの“今”がそのまま表れる活動 だと感じた場面でした。
目的
現場で劇あそびをスムーズに進めるための基本を押さえる。
手順
- 導入で問いかけを行い、子どもの言葉を拾う。
- 台本は「転換の言葉」だけ用意、セリフは自由にさせる。
- 観客の子どもにも問いかけて参加させる。
- 小道具は子どもと一緒に作る(新聞紙・段ボール・ティッシュ箱)。
- オオカミ役は「怖がらせる」より「問いかけ役」として動く。
ねらい
劇あそびが「子どもを知る場」になり、自分で作った家への愛着が生まれて学びが深まる。
まとめ|やり直せる力を育てる劇あそび
目的
劇あそびを通して「やり直せる子」を育てる。
手順
- 正しい選択を教えるのではなく、気づきを支える。
- 子どもの言葉を受け止める。
- オオカミを“問いかけ役”として扱う。
ねらい
子どもが自分の言葉で世界を理解し、失敗→振り返り→再挑戦の流れを体験する。
まとめ|やり直せる力を育てる劇あそび
現場からのひとこと
年長組で「三びきのこぶた」の劇あそびをしていた日のことです。
レンガの家を作った子が、舞台の端で段ボールを重ねながら 「ここ、もっと強くしたい」 とつぶやいていました。
その横で、木の家を作った子が自分の家の残骸を見つめていて、まだ気持ちが整理できない様子でした。
私がそばに行き、「どうする?」 とだけ声をかけると、 その子は段ボールを少し持ち上げて「……もう一回作る」と言いました。
すると、レンガの家を作っていた子が「いっしょにやる?」と声をかけ、二人で段ボールを並べ始めました。
その様子を見ていた別の子が 「テープ持ってくる!」 と走っていき、さらに別の子が 「ここ押さえとくね」 と手伝い始めました。
こうした“自然な協働”は、大人が指示したわけではなく、壊れた家を前にした子どもの気持ちに、周りの子が反応した結果 生まれたものです。
作り直しながら、木の家の子は 「さっきより強い?」と何度も聞き、友だちが 「うん、いい感じ」と答えると、 少し照れたように笑いました。
この場面を見ていると、劇あそびは“遊び”でありながら、子どもの心情や人格がそのまま表れる 貴重な育ちの場だと改めて感じます。
壊れた家を前にして悔しさを味わい、友だちの言葉で気持ちが動き、「もう一回やってみる」という気持ちが芽生える。
その一つひとつが、子どもが自分の世界をつくり直す力につながっていきます。
劇あそびは、 保育者も“遊び感覚”で楽しみながら、子どもの心を深く知ることができる活動です。
「失敗しても、また作ればいい」
その経験こそが、子どもたちの未来を支える大きな力になります。
目的
劇あそびを通して「やり直せる子」を育てる。
手順
- 正しい選択を教えるのではなく、気づきを支える。
- 子どもの言葉を受け止める。
- オオカミを“問いかけ役”として扱う。
ねらい
子どもが自分の言葉で世界を理解し、失敗→振り返り→再挑戦の流れを体験する。
おわりに|劇あそびは“子どもを知る場”になる
「三びきのこぶた」の劇あそびは、家が壊れる場面を通して、子どもが
選ぶ → 失敗する → やり直す
という学びのプロセスを自然に体験できる活動です。
材料を選ぶ理由、壊れたときの気持ち、次にどうしたいか── その一つひとつの言葉が、子どもの“今”を表しています。
保育者や先生が大切にしたいのは、正しい答えに導くことではなく、子どもの言葉を受け止め、次の行動につながるまなざしを向けること。
劇あそびは、子どもが自分の世界をつくり直す力を育て、大人には子どもの心を深く知る機会を与えてくれます。
「失敗しても、また作ればいい」
その経験こそが、子どもたちの未来を支える大きな力になります。
※本記事は著者の体験・見解に基づく情報提供を目的としています。実践の際は各現場の状況や子どもの発達段階に合わせてご活用ください。

