【体験レポート】『雪の女王』舞台づくり 55年間で演出が最も変わった出来事

アンデルセン

❄️ この記事は:「雪の女王」を55年間どのように舞台化・演出してきたか、その実践と試行錯誤の記録です。「なぜこの作品をミュージカルにしたか・物語の解釈」については「「雪の女王」をミュージカルにした理由」をご覧ください。

📌 本記事は著者の55年以上の演劇・語り芝居の現場体験に基づく個人の見解です。実践の際は各現場の状況に合わせてご活用ください。

✅ この記事でわかること

  • 『雪の女王』のメッセージをどう伝えるか
  • カイはなぜさらわれたのか?──脚本づくり最大の謎
  • 原因は“悪魔の鏡のかけら”にあった
  • ゲルダの“旅立ちの理由”をどう作るか

55年間で演出が最も変わった出来事

私は劇団天童を主宰して55年、これまでに『雪の女王』だけでも 延べ27回 上演し、約850人 の子どもたちがこの作品に挑んできました。

その長い年月の中で、演出家としての価値観が根底から変わった出来事があります。

それは 1996年10月、松戸市森のホール(小ホール)での初演 でした。当時の私は、舞台は「正確さ」「完成度」を追求するものだと信じていました。

動きの角度、台詞のテンポ、立ち位置──すべてを大人の基準で整えることが“良い舞台”だと思っていたのです。

しかし、本番直前。ゲルダ役の小学4年生の女の子が、震える手を胸の前でぎゅっと握りしめていました。私は励ますつもりで声をかけました。

「大丈夫。ゲルダは強い子だよ。あなたの中にも、その強さがある。」

幕が上がった瞬間、彼女は変わりました。雪の女王にさらわれたカイを追う場面で、台本にはない言葉を叫んだのです。

「カイ! 待って! 行かないで!!」

その声は震えていましたが、ホールの後ろまで届く強さがありました。 観客席が一瞬静まり返り、舞台袖にいた私は息をのみました。

その瞬間、私は悟りました。舞台は“正確さ”ではなく、“心が動いた瞬間”で立ち上がるのだと。

子どもの反応が教えてくれたこと

現場からのひとこと

1996年の初演が終わったあと、私は舞台袖でしばらく動けませんでした。

ゲルダ役の女の子が台本にはない叫びを放ったあの瞬間── 「カイ! 待って! 行かないで!!」 その声が、客席の空気を一気に変えたからです。

終演後、ロビーでは子どもたちが次々に声をあげました。

「ゲルダ、泣いてたよね。あれ本物だったよ。」
「カイ、なんであんなに冷たくなるの?怖いよ。」
「雪の女王って悪い人じゃない気もする。」
「ゲルダ、ひとりで行くの無理だよ。でも行くんだよね。」

その言葉を聞きながら、胸の奥がじんと熱くなりました。

子どもたちは、舞台の“表面”ではなく、彼の心の揺れをまっすぐ受け取っていたのです。

この初演の日の子どもたちの声が、私の演出家としての価値観を根底から変えました。

子どもの感受性に学ばなければならない。そう強く思わされた瞬間でした。

社会の変化が子どもの反応を変えた

1990年代後半から、子どもたちの自己肯定感はゆっくり下がり始めました。

稽古場では「間違えたくない」「失敗したくない」という声が増え、動きが合っていても、どこか自信のない表情が目立つようになりました。

2010年代に入ると、SNSの普及で“比較されること”に敏感になり、「自分なんて」「どうせ無理」という言葉が稽古場でも聞こえるようになりました。

子どもたちの心が、外の世界の影響を強く受ける時代になったのです。

だからこそ、私は演出を変えました。正確さを求めるのではなく、子どもが自分の弱さを出しても安心できる稽古場をつくること。

その弱さが、役の心と重なり、舞台の深さにつながると気づいたからです。

子どもの変化は、社会の変化の映し鏡。だから演出家は、子どもの声に合わせて考え方を変えなければならないのです。

私は55年間、子どもたちの反応に育てられてきました。

演出を変える前 → 変えた後

現場からのひとこと

演出を「正確さ」から「心の動き」に変えたあと、カイ役の子どもが見せた変化は、忘れられません。

同じ台本。同じセリフ。同じ場面。

なのに── 言葉の響きが、まったく違うのです。

以前は「覚えたセリフを言っている」声でした。でも、演出を変えた後は、胸の奥からそのまま出てきた“自分の声”になっていました。

「ゲルダなんて、もう知らないよ。」

この一言を言ったとき、彼の声は台本の文字ではなく、 役の心の痛みを受け取った“本物の声”でした。

その瞬間、舞台は劇ではなく、現実の出来事のように立ち上がったのです。

観客席が静まり返り、子どもたちの呼吸がそろい、舞台の空気が一段深く沈みました。

演出を変えたことで、子どもは「セリフを言う」のではなく、心の底にある言葉を“受け取って”声にするようになった。

その変化こそ、私が演出を変えて一番よかったと思う瞬間でした。

時期 演出の軸 子どもの姿 舞台の質
1996年以前 正確さ・完成度 指示を守る子が評価される きれいだが“心の揺れ”が少ない
1996年以降 心の動き・本音 役に入り込み、台詞が“生まれる” 観客の心を揺らす舞台に変化
2010年以降 自己肯定感の回復 弱さを出せる子が増える “人間の物語”として深まる

大人が変わらなければ、子どもは救えない

「今どきの子どもは…」と批判するのではなく、子どもの変化を見て、大人が考え方を変えるべき。

ミュージカルや語り芝居は、子どもの“本音”がそのまま舞台に出る世界。

だからこそ、大人は敏感に受け取らなければならない。

子どもは、社会の変化を映す鏡。そして、子どもの反応こそが、演出家を育ててくれるのです。

私は55年間、子どもたちに教えられてきました。これからも、子どもたちの声を聴きながら演出を変え続けます。

『雪の女王』のメッセージをどう伝えるか

現場からのひとこと

『雪の女王』を子どもたちと作るとき、いちばん苦労したのは「愛の力をどう舞台で立ち上げるか」でした。

言葉で説明しても伝わらない。台詞を覚えただけでは届かない。子どもが“自分の体験”として受け取らない限り、観客には響かないのです。

ある稽古の日、ゲルダ役の女の子がぽつりと言いました。

「カイがいなくなったら、わたし、ほんとうに困る。」

その言葉を聞いた瞬間、稽古場の空気が変わりました。 台本のセリフではなく、彼女自身の生活の中にある“誰かを思う気持ち”が、役の心と重なった瞬間でした。

その日から、私は稽古の前に子どもたちへ問いかけるようになりました。

「大切な人が困っていたら、どうする?」
「怖くても助けたいと思ったこと、ある?」
「自分のせいで誰かが泣いたら、どうする?」

すると、子どもたちの表情がいきいきと変わり始めました。ゲルダの旅は“物語の中の出来事”ではなく、自分の心の中にもある“誰かを思う気持ち”の延長線上になっていったのです。

本番の日。ゲルダ役の子が、カイに向かって震える声で言いました。

「カイ……帰ろうよ。」

その声は、台本の文字を覚えて言うのではなく、彼女自身の心の奥から出てきた“本物の呼びかけ”でした。観客席が静まり返り、涙をぬぐう音が聞こえました。

その瞬間、私は確信しました。

愛は、子どもが自分の体験として受け取ったときに初めて舞台で立ち上がる。

『雪の女王』のメッセージは、説明するものではなく、 子どもが“生きる”ことで観客に届くものなのです。

── 愛こそ最強のテーマを舞台で立ち上げる

物語の核となるテーマを決める


『雪の女王』を舞台化するにあたり、私たちスタッフは何度も話し合いを重ねました。物語の核となるテーマを明確にしなければ、脚本も演出も定まりません。

私が強く感じていたのは、「愛の力が困難を乗り越える」というメッセージをどう子どもたちに伝えるか、ということでした。

稽古では、子どもたちが自分の体験を語り合うワークショップを取り入れ、ゲルダがカイを救おうとする気持ちを“自分の言葉”で理解できるように工夫しました。

「大切な人が困っていたらどうする?」「怖くても助けたいと思ったことはある?」

そんな問いかけを通して、子どもたちの中にある“愛の感情”を引き出していきました。

我が身を捨てた愛が人を救う──演出家としての視点


『雪の女王』が伝えているのは、
「愛は恐れを溶かし、心を動かす最強の力である」という真実です。

ゲルダが命懸けでカイを救いに行く旅は、ただの冒険ではありません。 “誰かを思う気持ち”がどれほど強い力を持つかを示す象徴的な旅です。

役者たちには、「ゲルダの愛を演じることで、自分の中の強さを見つけてほしい」と伝えました。

観客には、「自分の人生でも、愛が困難を乗り越える力になる」と感じてもらえる舞台を目指しました。

カイはなぜさらわれたのか?──脚本づくり最大の謎

💡 現場からのポイント

子どもたちが物語の中で「選択する場面」を体験すると、思考力・共感力・自己表現力が自然と育まれます。語り芝居は、答えを教えるのではなく、子ども自身が考える時間を生み出す場です。

 

✳︎「雪の女王」脚本 浜島代志子作

カイが雪の女王にさらわれた理由を探る。いちばん苦労した場面です。

脚本家として避けて通れない“原因探し”


『雪の女王』を舞台化するうえで、 最初にぶつかった大きな壁がありました。

「カイはなぜ雪の女王にさらわれたのか?」

アンデルセンの原作を何度読み返しても、その理由がはっきり書かれていないのです。

  • 雪の女王に魔力があったのか
  • カイが自分からついていったのか
  • 美しい女王に魅了されたのか
  • 心の変化が原因なのか

この核心がわからなければ、脚本は書けません。

✳︎カイとゲルダ(劇団天童舞台)
対象 活動内容 育つ力
保育園・幼稚園 読み聞かせ・人形劇 想像力・感情表現
小学校低学年 劇あそび・ごっこ遊び 共感力・協調性
小学校高学年〜中学生 語り芝居・ミュージカル 自己表現・意思決定力

原因は“悪魔の鏡のかけら”にあった

現場からのひとこと

『雪の女王』を舞台化するとき、いちばん苦しかったのは 「カイはなぜさらわれたのか」を作ることでした。

原作には理由が書かれていない。子どもたちは必ずそこを質問する。 観客も納得できる理由が必要。でも、どこにも答えがない。

稽古場では、カイ役の子どもが何度も私に聞きました。

「先生、ぼくはどうして雪の女王について行っちゃうの?」

その問いに、私は答えられませんでした。“冷たいから”でもない。“魔法にかかったから”でもない。どれも子どもが納得しない。

ある日、稽古の途中でカイ役の男の子が、ゲルダ役の子に向かって乱暴な言葉を投げました。

「そんなの知らないよ!もういいよ!」

台本にはない言葉でした。でも、その声には“怒り”ではなく、自分でもどうしようもない心のざらつきがありました。

その瞬間、私はハッとしました。

──この“ざらつき”こそ、カイがさらわれる理由なのではないか。

稽古が終わったあと、原作を読み返しました。そして、ようやく気づきました。

カイの心臓に刺さった“悪魔の鏡のかけら”。これこそが、すべての始まりだった。

鏡のかけらが刺さった子どもは、美しいものを美しいと思えない。優しい言葉が胸に届かない。自分でも理由がわからないまま、心がゆがんでいく。

あの男の子の乱暴な言葉は、“演技”ではなく、鏡のかけらが刺さったカイの心そのものだったのです。

私はその瞬間、脚本の方向性が決まりました。

カイはさらわれたのではなく、心がゆがめられたことで、雪の女王に引き寄せられてしまった。

この解釈を入れたことで、子どもたちの演技が一気に変わりました。

カイ役の子は、「冷たさ」を演じるのではなく、“自分でもどうしようもない心の痛み”として冷たさを受け取るようになったのです。

その変化が、舞台全体の深さを決めました。

心をゆがめる鏡の正体


原作を深く読み込むうちに、私はひとつの答えにたどり着きました。

カイの心臓に刺さった“悪魔の鏡のかけら”こそが、すべての始まりだったのです。

悪魔の鏡は、

  • 美しいものを醜く
  • 醜いものを美しく
  • 良いものを悪く
  • 粗ばかりを強調して見せる

という恐ろしい性質を持っています。

鏡のかけらが刺さったカイは、乱暴な言葉を使い、ゲルダを傷つけるようになります。

「絵本なんて赤ちゃんが読むものさ」「ゲルダちゃんの鼻の穴、真っ黒だよ」子どもが演じると、この変化がとてもリアルに伝わります。

ゲルダの“旅立ちの理由”をどう作るか

原作には書かれていない“決定的な一言”


原作『雪の女王』では、ゲルダがなぜ一人で命懸けの旅に出るのか、その理由がはっきり書かれていません。

しかし舞台では、主人公が動く“強い動機”が絶対に必要です。

脚本を書いているとき、私は何度も立ち上がり、ゲルダのセリフを声に出し、動き、「この子はどうしてここまでできるのか?」と自分に問い続けました。

そのとき、ゲルダの口から突然飛び出したのが──

「あんたなんか、悪魔にさらわれちゃえばいい!」

この一言でした。

カイが鏡のかけらのせいで乱暴になり、ゲルダの大切なバラをむしり取ったとき、悲しさと悔しさが爆発してしまったのです。

この言葉こそ、ゲルダが旅に出る“後悔”と“責任”の源になりました。

ゲルダの決意──命をかける理由をつくる

現場からのひとこと

ゲルダが一人で雪の女王の城へ向かう── この“強い動機”をつくるのは、脚本家としていちばん苦しい作業でした。

ある稽古の日、ゲルダ役の女の子が、カイ役の男の子に向かって本気で怒ったことがありました。

カイ役の子が、ゲルダの大切にしていた“赤いバラ”を乱暴に引きちぎったのです。台本通りの動きでしたが、ゲルダ役の子はその瞬間、顔を真っ赤にして叫びました。

「なんでそんなことするの!やめてよ!」

稽古場が一瞬静まり返りました。その声は“演技”ではなく、彼女自身の心の奥から出た、本物の怒りでした。

稽古が終わったあと、私は彼女にそっと聞きました。

「さっき、どうしてあんなに怒ったの?」

すると彼女は、涙をこらえながら言いました。

「だって……あれ、私の大事なものだったから。」

その言葉を聞いた瞬間、私は悟りました。

──ゲルダが旅に出る理由は、“愛”だけでは足りない。 自分のせいで大切なものを壊してしまった“後悔”が必要だ。

そこで脚本に、ゲルダの決意を生む一言を入れました。

「あんたなんか、悪魔にさらわれちゃえばいい!」

この言葉は、ゲルダが本当に言いたかったわけではない。でも、心が追いつかず、感情が爆発したときに出てしまう“取り返しのつかない一言”です。

この一言が、ゲルダの後悔になり、責任になり、旅に出る“命をかける理由”になりました。

本番の日。ゲルダ役の子は、雪の女王の城に向かう場面で、震える声でこう言いました。

「カイを助けたい。あの時の私の言葉を、取り返したい。」

その声は、台本の文字ではなく、彼女自身の心の底から出た“本物の決意”でした。

観客席が静まり返り、子どもたちの呼吸がそろい、舞台が一段深く沈みました。

──ゲルダの旅は、脚本ではなく、子どもの心が生んだ“現実の決意”で立ち上がった。

この瞬間が、私が演出家として最も大切にしている場面です。

観客が納得する“強い動機”とは


ゲルダが一人で雪の女王の城へ向かうには、観客も役者も納得できるだけの理由が必要です。私は脚本の中で、 ゲルダの決意を次のように設定しました。

「飲まない、食べない、宝物に心を奪われない」

これは現実離れしているように見えますが、“愛のために自分を律する”という象徴的な誓いです。

観客はこの誓いを聞いた瞬間、ゲルダの覚悟の深さを理解します。

ゲルダの旅が観客の心を動かす理由

主人公の“弱さ”が強さに変わる瞬間


ゲルダは特別な力を持っていません。魔法も使えません。ただの小さな女の子です。

だからこそ、 彼女の旅は観客の心を強く揺さぶります。

  • 後悔
  • 恐れ
  • 罪悪感
  • それでも進む勇気

この感情の積み重ねが、ゲルダを“ただの少女”から“主人公”へと成長させます。観客は自然と彼女に感情移入し、「がんばれ、ゲルダ!」と声をかけたくなるのです。

ゲルダとカイ、運命の再会

✳︎雪の女王の宮殿 ゲルダの呼びかけに応えないカイ (劇団天童舞台)

氷の宮殿での静かな対面


ゲルダが雪の軍勢を突破し、ついにたどり着いた雪の女王の宮殿。そこには、
氷のかけらを並べ続けるカイの姿 がありました。

彼はゲルダの存在に気づかず、ただ無表情に氷を動かし続けています。ゲルダはそっと近づき、震える声で名前を呼びました。

「カイ……」

その声は、長い旅の疲れと後悔と愛が混ざった、たった一言の呼びかけでした。

ゲルダの涙が氷を溶かす理由

涙は“愛の証”として描く


ゲルダはカイの冷たい頬に触れ、こらえていた涙をこぼします。

その涙が、カイの胸に刺さった“悪魔の鏡のかけら”を溶かしていく── この瞬間は、舞台全体のテーマである 「愛は恐れを溶かす」を象徴する場面です。

涙はただの水ではありません。ゲルダの旅のすべてが詰まった“愛の結晶”です。観客席からは、いつも静かなすすり泣きが聞こえました。

カイの心が戻る瞬間の演出

表情の変化で“心の解凍”を見せる

 

✳︎ゲルダの呼びかけに反応するカイ 「雪の女王」(劇団天童舞台)

カイ役の子どもたちには、このシーンの演技を特に丁寧に指導しました。

  • 目の焦点が戻る
  • 呼吸が深くなる
  • 手が震える
  • ゆっくりとゲルダを見る

こうした細かな変化が、“心が溶けていく”過程を観客に伝えます。そして、カイが小さくつぶやくのです。

「ゲルダ……どうしてここに?」

この一言で、観客はカイが戻ってきたことを確信します。

二人の抱擁が物語を完成させる

舞台全体のテーマが結実する瞬間


ゲルダは泣きながらカイを抱きしめ、カイもゆっくりとその腕を返します。

この抱擁は、物語全体のテーマ── 「愛は心を取り戻す力」を象徴するクライマックスです。

照明は青から白へ、音楽は静かに温かく変わり、舞台全体が“春の訪れ”を感じさせる空気に包まれます。

観客はこの瞬間、ゲルダの旅が報われたことを心から感じるのです。

雪の女王は本当に“悪”なのか?

原作に描かれた雪の女王の姿


アンデルセンの原作では、雪の女王は“完全な悪”として描かれているわけではありません。

  • 冷たく
  • 美しく
  • 感情がなく
  • 孤独で
  • どこか人間離れした存在

彼女はカイをさらいますが、その動機は“悪意”というより、「心を凍らせた者を支配する」という性質に近いものです。

雪の女王は、“悪魔の鏡のかけら”によって心をゆがめられたカイを、自然と引き寄せてしまった存在とも言えます。

舞台では“悪魔の化身”として描く理由

観客にとってわかりやすい“敵”が必要


舞台では、観客が物語を理解しやすいように、
雪の女王=悪魔の化身 という演出を採用しました。

理由は3つあります。

  1. 悪魔が悪魔の姿で現れれば、誰も騙されない
  2. 美しい姿で近づくからこそ、カイは心を奪われる
  3. ゲルダの旅の“敵”が明確になることで、物語が引き締まる

この解釈により、雪の女王は“恐ろしい存在”であると同時に、“美しく魅惑的な存在”として描かれます。

雪の女王の“孤独”をどう表現するか

悪ではなく、愛を知らない存在として描く


雪の女王は、ただ冷たいだけの存在ではありません。彼女は
「愛を知らない」という深い孤独を抱えています。

だからこそ、愛を持つゲルダに勝てないのです。舞台では、雪の女王が去るときにほんの一瞬だけ見せる“寂しさ”を演出に入れました。

  • 照明を青から白へ
  • 音楽を静かに落とす
  • 女王役の俳優が一瞬だけ振り返る

このわずかな仕草が、観客に“雪の女王の孤独”を感じさせます。

雪の女王は“悪”ではなく“対比”として存在する

ゲルダの愛を際立たせるための存在


雪の女王は、ゲルダの愛を際立たせるための“対比”として存在します。

  • 冷たさ ⇔ 温かさ
  • 孤独 ⇔ 愛
  • 無表情 ⇔ 涙
  • 支配 ⇔ 解放

この対比があるからこそ、ゲルダの旅は輝き、カイの心が溶ける瞬間が強く伝わるのです。

雪の世界に春が戻る瞬間

ゲルダとカイの心が解けると、世界も解ける


ゲルダの涙によってカイの心が溶けた瞬間、雪の女王の宮殿に“春の気配”が流れ込みます。

これは単なる季節の変化ではありません。二人の心が取り戻されたことで、世界が変わる という象徴的な演出です。

氷の柱はゆっくりと透明になり、冷たい風は静まり、舞台全体が柔らかな光に包まれます。

観客はこの変化を通して、“心の春”を感じるのです。

物語が伝えたい“本当のメッセージ”

愛は、凍った心を溶かす力がある


『雪の女王』は、ただの冒険物語でも、ただのファンタジーでもありません。

アンデルセンが伝えたかったのは、「愛は恐れを溶かし、人を取り戻す力がある」という普遍的なメッセージです。

ゲルダは魔法を使いません。武器も持ちません。ただ、カイを思う心だけで旅を続けます。

その“心の強さ”こそが、雪の女王にも、悪魔の鏡にも勝つ力になったのです。

舞台づくりを通して見えた“子どもたちの成長”

物語のテーマが、子どもたち自身の成長と重なる


この作品を子どもたちと作るたびに、私はいつも同じことを感じます。

ゲルダの旅は、子どもたち自身の成長の旅でもある。

  • うまくいかなくて泣いた日
  • 仲間とぶつかった日
  • 自分の弱さと向き合った日
  • それでも前に進んだ日

そのすべてが、ゲルダの旅と重なっていきます。

本番の日、子どもたちが舞台の上で “自分の春”を迎える瞬間を見るたびに、私は胸が熱くなります。

『雪の女王』が今も愛される理由

時代が変わっても、人の心は変わらない


アンデルセンの物語は、150年以上前に書かれたものです。それでも今なお世界中で愛されるのは、
人の心の本質を描いているからです。

  • 恐れ
  • 孤独
  • 後悔
  • そして、愛

これらは時代が変わっても、人が生きる限り変わらないテーマです。だからこそ、『雪の女王』は今の子どもたちにも深く響きます。

まとめ──『雪の女王』を舞台化する意味

物語を舞台にすることで見えてくるもの

物語は“読む”だけではなく“生きる”もの


『雪の女王』を舞台化するたびに、私はいつも同じことを感じます。
物語は読むだけではなく、子どもたちが“生きる”ことで初めて本当の姿を見せる。

ゲルダの涙、カイの孤独、雪の女王の冷たさ、春の訪れ

これらは舞台の上で、子どもたちの呼吸や声や動きによって “命”を持ち始めます。

その瞬間、物語はただのテキストではなく、子どもたち自身の人生の一部 になるのです。

舞台づくりは“心を育てる教育”になる

子どもたちが自分の力で成長していく場


舞台づくりは、ただ演技を教える場ではありません。

  • 仲間と協力する
  • 自分の弱さと向き合う
  • 失敗しても立ち上がる
  • 誰かを思う気持ちを知る

こうした経験が、子どもたちの心を大きく育てていきます。ゲルダの旅は、そのまま子どもたちの成長の旅でもあります。

舞台の上で涙を流し、笑い、悔しがり、抱きしめ合う──そのすべてが、子どもたちの“心の春”につながっていくのです。

『雪の女王』が今の時代に必要な理由

愛が心を取り戻すという普遍の真理


現代は、子どもたちも大人も、心が凍りつきそうになる瞬間がたくさんあります。

  • 孤独
  • 不安
  • 比較
  • 失望

そんな時代だからこそ、『雪の女王』のメッセージは、より強く響きます。

「愛は恐れを溶かし、人を取り戻す力がある」

この物語が伝える真理は、150年前も、今も、これからも変わりません。

舞台づくりを続ける意味

物語を通して“心の光”を届けるために


私は55年間、子どもたちと舞台を作り続けてきました。その中で確信したのは、
物語は人の心を照らす光になる ということです。

ゲルダのように、誰かを思う気持ちが 世界を変える瞬間を何度も目の前で見てきました。

だからこそ、私はこれからも物語を語り、舞台を作り続けたいと思っています。

✅ まとめポイント

  • 『雪の女王』が今も愛される理由
  • 舞台づくりは“心を育てる教育”になる
  • 『雪の女王』が今の時代に必要な理由
  • 舞台づくりを続ける意味

※本記事は著者の体験・見解に基づく情報提供を目的としています。実践の際は各現場の状況や子どもの発達段階に合わせてご活用ください。

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