はじめに|昔話は“生きる力”の根っこを育てる
私は55年、保育・家庭・地域の現場で語り続けてきました。 子どもたちの前で昔話を語るたびに、物語が静かに、深く、心に届いていくのを感じます。
それは、昔話が「命の弱さに寄り添う心」「育てる愛」「つながる喜び」を、子どもたちの“生きる力”の根っことして育ててくれるからです。
昔話は、今を生きる子どもたちに「人とどう関わるか」「どう受け入れ、どう分かち合うか」を、物語を通して伝えてくれます。 そして、大人の私たちにも、「育てるとは何か」「受け入れるとはどういうことか」を、そっと問いかけてくれるのです。
この記事では、私が語ってきた昔話『ねずみのすもう』をもとに、語りの力、人形劇の実践、そしてその中で育まれる“人とつながって生きる力”について、保育者や保護者の皆さんにお届けしたいと思います。
あらすじ──餅とすもうと、家族の物語
昔、あるところに、貧しいけれど心豊かなおじいさんとおばあさんが住んでいました。 その家には、痩せたねずみが一匹。まるで息子のようにかわいがられ、家族のように暮らしていました。
ある日、痩せたねずみは、庄屋の蔵に住む太ったねずみとすもうをとることになります。 「はっけよい、のこった!」──勝負は一瞬で決まり、痩せたねずみは投げ飛ばされてしまいました。
しょんぼり帰ってきたねずみを見て、おじいさんとおばあさんは心を痛めます。 「正月神様に供える餅米だけど…あの子に食べさせてやろう」 二人は、餅をついて、痩せたねずみに食べさせました。
餅を食べて力をつけたねずみは、再びすもうに挑みます。 今度は、太ったねずみをすっぽんすっぽんと投げ飛ばし、見事に勝利しました。
驚いた太ったねずみが「どうしてそんなに強くなったんだ?」と尋ねると、痩せたねずみは答えます。 「おじいさんが、ぼくのために餅をついてくれたんだ」
そのやりとりを、木の陰で聞いていたおじいさんは、太ったねずみにも餅をついて食べさせます。 「おらも食いたい」と言った太ったねずみは、感謝の気持ちから庄屋の蔵からお金を持ってきて、おじいさんの家に引っ越してきました。
こうして、二匹のねずみは仲間になり、おじいさんとおばあさんと一緒に暮らすようになります。 やがてその家は、庄屋を追い越すほどの大金持ちになりました。
それは、惜しまず与え、受け入れ、分かち合った“愛の力”が生んだ豊かさでした。
物語が語る“愛の力”──育てる・分かち合う・つながる
この昔話の本質は「勝ち負け」ではありません。 おじいさんとおばあさんが、神様に供える大切な餅米を惜しまず、痩せたねずみに与えたこと。
そして、敵だった太ったねずみにも餅を分け与え、家族として迎え入れたこと。 その結果、ねずみたちは力を得て、家は豊かになっていきます。
この物語が教えてくれるのは── 「命を育てることは、惜しまず与えること」 「違いを越えて受け入れることが、つながりを生む」 「愛は、命を動かし、豊かさを生む力になる」ということです
語りの現場から──子どもたちに届いた瞬間
語りの場面と子どもの反応
ある冬の朝、外遊びを終えた子どもたちがストーブに手をかざしながら、私の前に集まってきました。 「今日は、ねずみのお話をするね」と声をかけると、目がぱっと開きました。
語り始めると、痩せたねずみが太ったねずみに投げ飛ばされる場面で、ひとりの子がつぶやきました。 「かわいそう…」 その声に、隣の子がすぐに応えました。 「餅、食べたら勝てるよ!」「おじいさん、貧乏だから無理」──子ども同士が物語の中で対話を始めたのです。
おじいさんとおばあさんが餅をつく場面では、「餅つき、やってあげる!」「ぺったんぺったん」と言いながら、餅をつくふりをしてくれました。
痩せたねずみが太ったねずみを投げ飛ばす場面になると、「やった!」とガッツポーズ。 太ったねずみが、おじいさんのお餅を食べさせてもらう場面では、「おじいさん、やさしいね」「金持ちの家よりおじいさんの家の方がいいんだね」と、心の声があふれました。
語り終えたあと、「仲間になれてよかったね」と言った子の言葉に、私は胸が熱くなりました。
思いやり・助け合い・仲間になる喜
『ねずみのすもう』は、ただの勝ち負けの話ではありません。 痩せたねずみが負けて悔しがる姿に、子どもたちは自然と心を寄せます。
おじいさんとおばあさんが餅をついて食べさせる場面では、「やさしいね」「これで勝てるね」と、ねずみの気持ちに寄り添う声が生まれました。
語り終えたあと、「仲間になれてよかったね」とつぶやいた子の言葉に、私ははっとしました。
子どもたちは、物語を通して「誰かを思いやる気持ち」「助けてもらったら感謝する心」「敵だった相手とも仲良くなれること」──そんな人との関わり方を、感じ取っていたのです。
昔話は、子どもたちの中に“人とつながって生きる力”を育ててくれる。 それは、日々の保育や家庭の中で大切にしたい「思いやり」「感謝」「受け入れる心」といった、具体的な人間関係の土台です
人形劇にしてみよう──保育室での実践と工夫
昔話を語ったあと、子どもたちの中に「やってみたい!」という気持ちが芽生えたとき── それは、物語が心に届いた証です。
『ねずみのすもう』を語ったある日、子どもたちが目を輝かせて言いました。 「ぼくが太ったねずみやる!」「わたし、おばあさんの声できるよ!」
その声に応えて、「じゃあ、簡単な人形劇、やってみようか」と提案すると、保育室は一気に劇づくりの空気に包まれました。
厚紙や色紙、割り箸、フェルト──身近な素材を使って、子どもたちは自分の役の人形を作り始めます。 「こんな顔にしよう」「餅つきの音はどうする?」と、創造の力がどんどん広がっていきます。
舞台は、テーブルに布をかけるだけで十分。 そこが、命と心が響き合う劇場になります。
セリフを覚え、動きを考え、仲間と息を合わせる。 その過程で、子どもたちは「協力する力」「表現する力」「感情を理解する力」を自然に育てていきます。
劇が終わったあとも、物語の世界は続きます。 「餅つきごっこ」「ねずみのおうちづくり」「お金を持ってくる場面の再現」── 遊びが広がり、物語が保育室の日常に根づいていきます。
そして何より、子どもたちの心が動く瞬間が、そこかしこに生まれます。 悔しさに寄り添う、喜びを分かち合う、仲間になる喜びを感じる── それは、語りと人形劇が育てる“人とつながって生きる力”です。
この実践は、どの保育室でもできます。 語ってみてください。演じてみてください。 保育室が、命と心が育ち合う舞台になります。
セリフ付き台本(場面ごとの構成)
場面1|痩せたねずみ、負けて帰る
太ったねずみ「さあ、今日も勝負だ!おまえなんか、ひとひねりだ!」
痩せたねずみ「なにを!今日は負けないぞ!」
みんなで「はっけよい、のこった!」
太ったねずみ「それっ!とうっ!」
痩せたねずみ「うわっ…!」(投げられて転がる)
痩せたねずみ(しょんぼり)「はあ…また負けちゃった。ぼく、どうしてこんなに弱いんだろう…」
場面2|おじいさん、山でねずみの相撲を見る
おじいさん「今日は薪を拾いに来たが…ん?あれは何だ?」
おじいさん(木の陰からのぞきながら)「痩せたねずみが、また負けてる…悔しそうな顔して…」
太ったねずみ「おらの勝ちだ!おまえなんか、いつだって負けっぱなしだ!」
痩せたねずみ「ぼく、強くなりたいのに…」
おじいさん(心の声)「あの子に、力をつけてやりたい…よし、餅をついて食べさせよう」
場面3|おじいさんとおばあさん、餅をつく
おじいさん「また負けたのかい?かわいそうに…」
おばあさん「正月の神様に供える餅米だけど…あの子に食べさせてあげましょう」
おじいさん「そうだな。あの子は、うちの息子みたいなもんだ。
二人で「ぺったん、ぺったん!よいしょ、よいしょ!」
おばあさん「できあがり!ねずみさん、おあがり。これで元気が出るよ」
場面4|痩せたねずみが勝つ
太ったねずみ「また来たのか?今日も負けるぞ!」
痩せたねずみ「今度こそ、負けないぞ!」
みんなで「はっけよい、のこった!」
痩せたねずみ「それっ!えいっ!」
太ったねずみ「うわっ…!」
痩せたねずみ「やった!勝った!ぼく、強くなったんだ!
太ったねずみ「すごいな…どうしてそんなに強くなったんだ?」
痩せたねずみ「おじいさんとおばあさんが、餅をついてくれたんだ」
場面5|太ったねずみ、家族になる
太ったねずみ (しばらく黙って)「……おらも餅、食いたい」
おじいさん「おばあさん、太ったねずみが餅を食べたいそうじゃ」
おばあさん「はいはい。あの子にも食べさせましょう」
二人で「ぺったん、ぺったん!よいしょ、よいしょ!」
おじいさん「ほら、おあがり!」
太ったねずみ「えっ…おらにも?」
場面6|太ったねずみ、庄屋の蔵からお金を持ってくる
太ったねずみ「おら、こんなに優しくしてもらったのは初めてだ… お礼に、庄屋の蔵から金を持ってこよう」
太ったねずみ「よいしょ、よいしょ…これだけあれば、きっと喜んでくれる」
太ったねずみ「おじいさん、おばあさん!これ、おらからのお礼じゃ!」
おじいさん「まあまあ、こんなにたくさん…!」
おばあさん「庄屋のねずみさん、ありがとう。これで、みんなで豊かに暮らせるね」
場面7|みんなで仲良く暮らす
ナレーション(語り手)「それからというもの── おじいさんとおばあさんは、大金持ちになっても、毎日まじめに働きました。 二匹のねずみは、まるで本当の息子のように、家族として仲良く暮らしました」
痩せたねずみ「おじいさん、おばあさん、今日も畑に行くの?」
おじいさん「そうじゃ。働くことは、心の餅つきみたいなもんじゃ」
太ったねずみ「おらも手伝うぞ!」
おばあさん「みんなで働いて、みんなで食べて、みんなで笑う──それが一番の幸せじゃ」
みんなで「さあ、今日も元気に暮らそう!」
(歌いながら手をつなぎ、舞台を閉じる)
人形劇の魅力と効用──命が見えるから、心が動く
人形劇が育てる力(感情・協力・創造)
人形劇は、保育室の空気を変えます。 語りを聞いていた子どもたちが「やってみたい!」と声をあげた瞬間から、保育室は“命と心が育ち合う舞台”に変わるのです。
感情──「ぼく、悔しい」「わたし、うれしい」
ある日、『ねずみのすもう』を語ったあと、子どもたちと人形劇を始めました。 痩せたねずみが負ける場面で、演じていた子が人形を見つめながらぽつりと言いました。
「かわいそう…ぼく、負けるのいやだな」 その声に、隣の子がすぐに応えました。 「餅食べたら、元気になるよ!」 子どもたちは、登場人物の気持ちを自分のことのように感じているのです。
餅を食べて勝った場面では、「やったー!」とガッツポーズ。 太ったねずみが仲間になる場面では、「仲間になれてよかったね」と、演じながら涙ぐむ子もいました。
人形を通して、子どもたちは感情を受け止め、言葉にし、分かち合っていきます。
協力──「一緒にやろう」「せーので動かそう」
人形劇は、ひとりではできません。 ある保育室では、役を決めるときに「ぼくが太ったねずみやる!」「じゃあ、わたしはおばあさん!」と、自然に役を分け合っていました。
セリフを覚えるのが難しい子には、隣の子がそっと教えてあげる。 「せーの!」で人形を動かすと、みんなの笑顔がそろう。 セリフがずれても、誰かが「もう一回やろう!」と声をかける。 人形劇の中で、子どもたちは“協力する喜び”と“仲間とつながる力”を育てていきます。
創造──「こんな顔にしよう」「餅つきの音はどうする?」
人形づくりの時間は、創造の宝庫です。 ある子は、痩せたねずみの顔に涙のしるしを描いていました。「負けて悔しいから、泣いてるの」──その表現に、先生たちは思わず見入ってしまいました。
餅つきの音をどうするか話し合ったとき、「ぺったん、ぺったん!」「よいしょ、よいしょ!」と、子どもたちが自分たちでリズムを考えました。 舞台は、テーブルに布をかけただけ。
でも、そこに命が宿ると、子どもたちは本気になります。
「できた!」「うまくいった!」という達成感が、自分を信じる力=自己肯定感につながっていきます。
人形劇は、語りの世界を“目に見える命”に変えてくれます。 子どもたちは、動く人形に命を感じ、心を動かされます。 悔しさに寄り添い、喜びを分かち合い、仲間になる喜びを感じる── それは、語りと人形劇が育てる“人とつながって生きる力”です。
保育室が舞台になる──実践の広がり
語り終えたあと、子どもたちが「やってみたい!」と目を輝かせる瞬間があります。 その声に応えて人形劇を始めると、保育室の空気が変わります。
そこはもう、ただの部屋ではなく、“命と心が響き合う劇場”になります。
ある日、『ねずみのすもう』を語ったあと、私はそっと問いかけました。 「ねずみさんの劇、やってみる?」 すると、子どもたちは一斉に立ち上がり、「やる!」「ぼく、太ったねずみ!」「わたし、おばあさん!」と、役を分け合い始めました。
舞台は、テーブルに布をかけただけ。 人形は、紙袋やフェルト、割り箸で作ったもの。 でも、子どもたちが命を吹き込むと、それは本物のねずみになり、おじいさんになり、おばあさんになります。
セリフを覚え、動きを考え、仲間と息を合わせる。 「せーの!」で人形を動かすと、笑顔がそろい、心がそろいます。 セリフを忘れても、隣の子がそっと教えてくれる。
「もう一回やろう!」と声をかける子もいます。 そのやりとりの中に、協力・表現・創造・感情の理解が自然に育っていきます。
劇が終わったあとも、物語の世界は保育室に残ります。 「餅つきごっこ」「ねずみのおうちづくり」「お金を持ってくる場面の再現」── 遊びが広がり、物語が日常に根づいていきます。
ある子は、太ったねずみの人形を抱きながら言いました。 「この子、仲間になれてよかったね」 その言葉に、私は胸が熱くなりました。 子どもたちは、物語の中で“人とつながる喜び”を体験しているのです。
この実践は、どの保育室でもできます。 特別な設備はいりません。 語ってみてください。演じてみてください。 保育室が、命と心が育ち合う舞台になります。
語りと人形劇が響き合うとき
語りは、耳で聴き、心で感じるもの。 人形劇は、それを目で見て、身体で受け止めるもの。 この二つが響き合うとき、子どもたちの中に“命の物語”が生まれます。
語りで物語の世界に入り、人形劇でその世界を“見て”感じる。 「負けて悔しい」「餅を食べてうれしい」「仲間になれてよかった」── 子どもたちは、登場人物の気持ちを自分のことのように受け止め、言葉にし、動きにします。
ある保育園では、語りのあとに人形劇を始めると、子どもたちが自然にセリフを口にし始めました。
「ぼくが太ったねずみやる!」「わたし、おばあさんの声できるよ!」 誰かがセリフを忘れても、隣の子がそっと教えてくれる。 「せーの!」で人形を動かすと、笑顔がそろい、心がそろいます。
語りが心の奥に火を灯し、人形劇がその火を外に広げる。 そのとき、保育室はただの空間ではなく、命と心が育ち合う舞台になります。
そして、子どもたちだけでなく、大人もまた、物語に“語り直される”のです。 「育てるとは何か」「受け入れるとは何か」「つながるとはどういうことか」── 語りと人形劇が響き合うとき、保育は命の営みそのものになります。
難しく考えなくて大丈夫です。 語ってみてください。演じてみてください。 子どもたちは、先生の声と手の中に宿った命に、ちゃんと心を動かしてくれます。
その瞬間、保育室に“見えない花”が咲きます。 それは、語りと人形劇が育てる、子どもたちの“人とつながって生きる力”です。
保育者のためのQ&A──語りと人形劇、どう始める?
Q1:昔話を語るのが初めてです。どう始めたらいいですか?
まずは、好きな昔話を一つ、声に出して読んでみてください。 誰かのためじゃなく、自分のために。 語りは「覚えること」ではなく、「感じること」から始まります。
私も最初は、絵本を見ながら、子どもたちの顔を見ながら、たどたどしく語っていました。 でも、子どもたちは、完璧な語りよりも、心から語る声に耳を傾けてくれます。
語りは、読むのではなく「届ける」もの。 登場人物の気持ちを自分の中に通して、言葉にしていく。 それだけで、子どもたちは物語の世界に入っていきます。
おすすめは、短くて情景が浮かぶ昔話。 『ねずみのすもう』は、語りやすく、子どもたちの心にすっと届きます。 負けて悔しいねずみ、餅をついてくれるおじいさん、仲間になる太ったねずみ── 語っているうちに、あなた自身の中にも物語が根づいていきます。
語りは、特別な技術ではありません。 あなたの声と、あなたの心があれば、もう始められます。
どうぞ、語ってみてください。 子どもたちは、あなたの語りの中に、命の物語を見つけてくれます。
Q2:人形劇の準備が大変そう…簡単にできますか?
はい、できます。 人形劇は、立派な舞台や高価な人形がなくても始められます。 むしろ、保育室にあるものだけで作る方が、子どもたちの創造力がぐんと育ちます。
私は、紙袋・フェルト・割り箸・色紙──そんな身近な素材で、何度も人形劇をしてきました。 テーブルに布をかければ、そこが舞台。 子どもたちが「ぼくのねずみは泣いてる」「わたしのおばあさんは笑ってる」と、自分の人形に命を吹き込んでいきます。
大切なのは、“本物らしさ”ではなく、“心が動くこと”。 人形が動くと、子どもたちは命を感じます。 セリフを言うと、気持ちが動きます。 仲間と合わせると、つながる喜びが生まれます。
先生が「やってみよう」と思えば、もう準備は半分終わっています。 完璧じゃなくていい。心がこもっていれば、子どもたちはちゃんと受け取ってくれます。
まずは、語ってみてください。 そして、子どもたちの「やってみたい!」の声に耳を傾けてみてください。 そこから、人形劇の花が咲き始めます。
Q3:セリフが長いと覚えられない子もいます。どうしたらいいですか?
大丈夫です。覚えられなくても、心が動いていれば、それで十分です。 人形劇は、“セリフを言うこと”より、“気持ちを伝えること”が大切なんです。
私は、セリフを忘れた子が黙ってしまったとき、隣の子がそっと「こう言うんだよ」と教えている場面を何度も見てきました。 そのやりとりこそが、人とつながる力の芽生えです。
セリフは短く、リズムのある言葉にすると覚えやすくなります。 「はっけよい、のこった!」「ぺったん、ぺったん」「おらも餅、食いたい」── 子どもたちは、こうした言葉を遊びの中で自然に口にします。
もし言えなくても、動きや表情で気持ちは伝わります。 「負けて悔しい」「仲間になれてうれしい」──その感情が伝われば、劇はちゃんと“生きて”います。
先生が「大丈夫だよ」「気持ちがこもってたね」と声をかけるだけで、子どもたちは安心して、また挑戦しようと思えます。
語りも人形劇も、心が動くことがいちばん。 セリフは、その“おまけ”です。
Q4:人形劇をする時間がとれません。語りだけでもいいですか?
大丈夫です。覚えられなくても、心が動いていれば、それで十分です。 人形劇は、“セリフを言うこと”より、“気持ちを伝えること”が大切なんです。
私は、セリフを忘れた子が黙ってしまったとき、隣の子がそっと「こう言うんだよ」と教えている場面を何度も見てきました。 そのやりとりこそが、人とつながる力の芽生えです。
セリフは短く、リズムのある言葉にすると覚えやすくなります。 「はっけよい、のこった!」「ぺったん、ぺったん」「おらも餅、食いたい」── 子どもたちは、こうした言葉を遊びの中で自然に口にします。
もし言えなくても、動きや表情で気持ちは伝わります。 「負けて悔しい」「仲間になれてうれしい」──その感情が伝われば、劇はちゃんと“生きて”います。
先生が「大丈夫だよ」「気持ちがこもってたね」と声をかけるだけで、子どもたちは安心して、また挑戦しようと思えます。
語りも人形劇も、心が動くことがいちばん。 セリフは、その“おまけ”です。
Q5:子どもたちがふざけてしまうことがあります。どう対応したら?
ふざけているように見えても、実はそうじゃないことが多いんです。 子どもたちは、興奮しているんです。やりたい気持ちがあふれて、体が先に動いてしまう。 それは、物語が心に届いた証です。
人形劇の準備を始めると、急に大声を出したり、ふざけた動きをする子がいます。 でも、よく見ていると、ちゃんと話を聞いていて、役の動きを真似していたり、セリフを口にしていたりします。
“ふざけ”に見える行動の奥には、「やってみたい」「仲間になりたい」という気持ちがあるのです。
だから、ガミガミ叱らないでください。 「やりたいんだね」「面白そうだね」と、まず気持ちを受け止めてあげてください。
すると、子どもたちは安心して、自分の役割に向かっていきます。
私は、ふざけていた子が、最後に「ぼく、ねずみの気持ちわかったよ」と言ったとき、涙が出そうになりました。
子どもたちは、ちゃんと感じている。ちゃんと育っている。
語りも人形劇も、心が動く場です。 その場にいるだけで、子どもたちは“命の物語”を受け取っています。
どうぞ、安心して見守ってください。 そのまなざしが、子どもたちの“人とつながって生きる力”を育てていきます。
まとめ──昔話が育てる“人とつながって生きる力
昔話は、子どもたちの心に“見えない花”を咲かせます。 『ねずみのすもう』は、弱さに寄り添い、力を分け合い、仲間になる喜びを教えてくれます。
語りで心が動き、人形劇で命が見える。 その体験が、子どもたちの「感じる力」「つながる力」を育てます。
特別な準備はいりません。 語ってみてください。演じてみてください。 その一歩が、子どもたちの“生きる力”につながります。あなたの保育室にも、きっと花が咲きます。
コメント