デンマークに行ったからにはアンデルセンのお墓参りをしなくちゃね。コペンハーゲン中心部の北側エリアに教会の墓地にあると友達の通訳さんが連れて行ってくれた。教会の墓地というと鬱蒼とした森の中にあるのかな、気味が悪いのかなと心細い気分になったが心配することはなかった。
アシステンス墓地は緑豊かで人気の遠足スポット
デンマークのお墓は立っていない。地面に石や板のプレートが置かれていて名前が彫ってある。何年に生まれて何年にこの世を去ったかということを記している。墓に何か書いてあるがデンマーク語がわからない。生前に好きだった言葉や生き残った人が贈る言葉だそうです。
墓の周りには可愛らしい花が植えられている。愛らしい花壇のようだ。賑やかなわり声がして3、4人がやってきた。手にはバスケットやカバン、中からおいしそうなパンやサンドイッチ、ペットボトルがのぞいている。どうやら墓地でおやつの時間を過ごすらしい。
深刻な顔をしている人は誰もいない。ふうん、デンマークのお墓参りは楽しくするのね。故人を忍ぶからといって辛く悲しい顔をしないのね。沖縄もそうよね。私たちに気づいた誰かが何か話しかけてきた。
ここに眠っている人はこんな人だった、ということを誇らしげに話してきたということだ。お菓子を誘われるのかなと思ったけれど、それはなかった。ちょっと残念だった。
スウェーデンの詩人カール・アウグスト・ニカンデルは1827年にアシスデンス墓地を訪れたことを懐かしく思い出してこう書いている。(*アンデルセンは1805年に生まれている)もっと穏やかで静かな祝祭を楽しむためにアシステンス墓地まで歩いて行きました。
ここは確かにヨーロッパで最も美しい墓地の一つです。葉の茂った木々、暗い小道、明るく開放的な花の咲く広場、ポプラの木陰の寺院、しだれ桜が覆う大理石の墓、薔薇の花に囲まれた壺や十字架、香りと鳥のさえずり、これら全てがこの死の地を小さな楽園に変えています。
そうか、死の地を小さな楽園に変えたのね。さすが、詩人。ヨーロッパで最も美しい墓地だそうです。
盛大な葬儀には見物人が集まり大騒ぎしたそうな
遠足は騒々しい集まりに発展し、墓地内での飲食、音楽、陽気な行為を禁止するために法律が生まれたが守られなかった。敷地内に住んでいる墓掘り人が禁止する役目を持っていたが彼らは職務を軽視した。盛大な葬儀には墓地の壁を飾り立てて見栄え良くしたそうです。
参拝者を減らす為に入場料を取ろうとしたが実現されなかった。今は大騒ぎはしないが1800年代の伝統が残っているのね、お葬式は寂しくしんみりするものではないのね。これがデンマークの葬式文化。
日本のお寺の鐘はごーんごーんと陰気な感じで鳴るが教会の鐘はカーンカーンと鳴り響く。この違いかしら。明るいお墓にピクニックのような陽気な墓参りをする人達にさよならを言ってアンデルセンのお墓を探しに行く。
アンデルセンのお墓はどこに・・・道の向こうにふっと立っている
ガイドしてくださった日本人もアンデルセンのお墓は初めてなのよ、よいうわけでナビを頼りに車を走らせる。このあたりが教会のはず、と言っても教会らしき建物は見えない。緑が広がり花も咲く広々とした公園。どこまでも続く広い真っ直ぐの一本道。
右と左に分かれる所に来た。さあ、どっちだろう。標識が地味に立っている。アンデルセンの墓、と書いてある。デンマーク語で書いてあるけれどすぐにわかった。右にも左にも墓はない。7、8分くらい歩いた所に看板みたいなのが立っている。
あれがアンデルセンのお墓。鉄柵で四角に囲われている向こうに垣根みたいな低い木の中にぼそっといった感じで立っている。板と見えたのは銅板だろうか。縦2、5メートルくらい、横幅は1メートルくらい。H.C.アンデルセン、下には生まれた年と亡くなった年が書いてあるのだと思うが、少し遠くて読めなかった。
観光スポットとして大切にしているのでもなく、ほんとうにぼそっと立っている。世界の童話作家アンデルセンの墓だもの、さぞや立派だろうと思ったが完全に外れた。しらくそこにいるうちに飾らないお墓のほうがアンデルセンらしくていい、これでいいのだ、いや、これがいいのだ。
年配のご婦人が話しかけてきた。「どこから来たの?若い人は日本からたくさんくるわ。あなたはどうしてアンデルセンのお墓に来たの?」どう見ても若い観光客ではない私。「アンデルセンが好き。私のミュージカル劇団でアンデルセンを舞台化したの。だからアンデルセンに会いにきた」
自分もアンデルセンが大好き。子どもの頃から読んでいた。自分の子供にも読んで聞かせた。ホーセ(デンマーク人はハンス・クリスチャン・アンデルセンのことをホーセと呼ぶ)は人生に大事なことを教えてくれる。
今のデンマーク人はホーセを知らない。ホーセは古い人で価値を認めない。日本人がわざわざ来るのに困ったものよ。ご婦人は怒っていた。どんなお話が好きかと聞かれた。みにくいあひるの子、雪の女王を劇中劇にして舞台にあげた。
ご婦人は猛烈な勢いでアンデルセンの小品について話してくれた。15分以上だったかもしれない。連れが話しかけてくれたので、ご婦人と握手をして別れた。日本の子供達にアンデルセンの話を「してね。もちろんです。それが私の生涯をかけた仕事ですからね。
アンデルセンのお墓の様子は後ほど写真でご紹介します。
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